出雲国風土記・現代語訳:島根郡条の神話

島根郡条に登場する神話をまとめました。

ここでまとめているのは神話(神が何かをした話)であり、内容は意訳となっています。


島根(しまね)の由来


島根と名付けるわけは、国引きをなさった八束水臣津野命(やつかみずおみづぬ)がおっしゃられて名を負わせなさったので島根という(八束水臣津野命の諡号とも読める)。

対応箇所:島根郡の総記

朝酌郷(あさくみごう)の由来


熊野大神命(くまのおおかみ)が朝御餼勘養(あさみけのかむかい)・夕御餼勘養(ゆうみけのかむかい)のために五つ贄を奉仕する集団の居所を定めたので朝酌という。

対応箇所:島根郡の郷

山口郷(やまぐちごう)の由来


須佐能袁命(すさのお)の御子・都留支日子命(つるぎひこ)が「私が治める山口のところである」と言ったので山口という名を負わせた。

対応箇所:島根郡の郷

手染郷(たしみごう)の由来


所造天下大神命(大穴持命)が「この国は丁寧に造った国である」と言ったので丁寧という名を負わせた。それが訛って今の人が手染郷と呼んでいる。

対応箇所:島根郡の郷

方結郷(かたゆいごう)の由来


須佐能袁命の御子・国忍別命(くにおしわけ)が「私が治める地は地形がよい」と言ったので方結という。

対応箇所:島根郡の郷

加賀郷(かかごう)の由来


ここは佐太大神のお生まれになった所である。御母である神魂命(かみむすび)の御子・支佐加比売命(ささかひめ)が「暗い岩穴である」と言って金の弓を持って射られた時に光り輝いたので加加(加賀)という。

対応箇所:島根郡の郷

生馬郷(いくまごう)の由来


神魂命の御子・八尋鉾長依日子命(やひろほこながよりひこ)が「私の御子神は心やすらかで憤らない」と言ったので生馬という。

対応箇所:島根郡の郷

法吉郷(ほほきごう)の由来


神魂命の御子・宇武賀比売命(うむかひめ)が法吉鳥(ほほきどり)になって飛んで来て此処に鎮座したので法吉という。

対応箇所:島根郡の郷

虫居 虫者 島(たこしま)の由来


古老が伝えて言うことには、出雲郡の杵築御埼(きづきのみさき)に虫居 虫者(タコ)がいた。それを天羽々鷲(あめのははわし)がさらって掴んで飛んで来てこの島に留まった。だから、虫居 虫者(タコ)島という。今の人は、ただ誤って拷島(たくじま)と名付けられている。

対応箇所:島根郡の海岸地形 - 1

蜈蚣島(むかでしま)の由来


古老が伝えて言うことには、虫居 虫者 島にいた虫居 虫者(タコ)が蜈蚣を咥えて来てこの島に留まったので蜈蚣島という。

対応箇所:島根郡の海岸地形 - 1

加賀神埼(かかのかんざき)にまつわる神話


いわゆる佐太大神(さだたのおおかみ)が産まれた所である。

この佐太大神が産まれようとするときに弓矢がなくなった。そのとき、御母の枳佐加比売命(きさかひめ)が「わたしの御子が麻須羅神(ますらかみ)の御子ならば無くなった弓矢よ出て来なさい」と祈願した。すると、角の弓矢が水のまにまに流れ出た。枳佐加比売命はこの弓矢を取って「これは無くなった弓矢ではない」と言って投げ捨てた。すると、また金の弓矢が流れ出てきたので この弓矢を取り、「暗い窟だ」と言って弓矢を射通したという(この矢は射った時に光り輝いたといわれ加賀の地名由来になっている)。

この支佐加比売命の社が此処にある。今の人はこの窟の周辺を通る時には必ず大声を轟かせて行く。もし密かに行こうとすると神が現われて突風が起こり、行く船は必ず転覆するといわれている。

対応箇所:島根郡の海岸地形 - 6