現代語訳

出雲国の東の堺から西に行くこと二十里一百八十歩で、野城橋（のぎ）に至る。橋の長さは三十丈七尺、広さは二丈六尺ある〔飯梨川（いいなしかわ）。〕また、西に二十一里で、国庁・意宇郡家（こくちょう・おうぐんけ）の北の十字街（じゅうじのちまた）に至る。ここで別れて二つの道となる。〔正西道と枉北道（おうほくどう）である。〕

枉北道（おうほくどう）は、北に行くこと四里二百六十六歩で、郡の北の堺の朝酌渡（あさくみのわたり）に至る。〔渡は八十歩、渡船が一隻ある。〕また、北に一十一里一百四十歩で、島根郡家（しまね）に至る。郡家より北に行くこと一十七里一百八十歩で、隠岐渡（おき）、千酌駅家（ちくみのうまや）の浜に至る。〔渡船がある。〕

また、島根郡家より西に一十五里八十歩で、郡の西の堺の佐太橋（さだ）に至る。橋は長さは三丈、広さは一丈ある。〔佐太川。〕また、西に八里二百歩で、秋鹿郡家（あきか）に至る。また、秋鹿郡家より西に一十五里一百歩で、郡の西の堺に至る。また、西に八里二百六十四歩で、楯縫郡家（たてぬい）に至る。また、楯縫郡家より西に七里一百六十歩で、郡の西の堺に至る。また、西に一十里二百二十歩で出雲郡家（いずも）の東のほとりで、正西道に入る。合計で枉北道程九十九里一百一十歩の中で、隠岐道は一十七里一百八十歩である。

正西道は、十字街より西に一十二里で野代橋に至る。橋の長さは六丈、広さは一丈五尺ある。また西に七里で、玉作町（たまつくり）に至る。ここで分かれて二つの道となる。〔一つは正西道、一つは正南道である。〕

正南道は、一十四里二百一十歩で、意宇郡の南西の堺に至る。また、南に二十三里八十五歩で、大原郡家（おおはら）に至る。ここで分かれて二つの道となる。〔一つは南西道、一つは東南道である。〕

南西道。五十七歩で斐伊河に至る。〔渡は二十五歩、渡船が一隻ある。〕また、南西に二十九里一百八十歩で、飯石郡家（いいし）に至る。また、飯石郡家より南に八十里で、出雲国の南西の堺に至る。〔備後国三次郡（びんごのくにみよしぐん）に通じる。〕合計で国庁からの路程は、一百六十六里二百五十七歩である。

東南道、大原郡家から二十三里一百八十二歩で、郡の東南の堺の仁多郡比比理村（にたぐんひひりむら）に至る。また東南一十六里二百四十六歩で仁多郡家に至り、ここで分かれて二つの道となる。〔正東道と正南道。〕正東道は、三十五里一百五十歩で、伯耆国（ほうきのくに）との堺 阿志毘縁山（あしびえ）に至る。正南道は、三十八里一百二十一歩で、備後国の堺の遊託山（ゆた）に至る。

正西道、玉作街より西に九里で、来待橋（きまち）に至る。橋の長さは八丈、広さは一丈三尺ある。また西に一十四里三十歩、郡の西の堺の佐雑埼（さぞう）に至る。また、西に一十三里六十四歩で出雲郡家に至る。

また、出雲郡家より西に二里六十歩で郡の西の堺の出雲河（いずも）に至る。〔渡は五十歩、渡船が一隻ある。〕また、西に七里二十五歩で、神門郡家（かんど）に至る。河がある。〔渡は二十五歩、渡船が一隻ある。〕神門郡家から西に三十三里で、出雲国の西の堺に至る。〔石見国安農郡（いわみのくにあのぐん）に通じている。〕合計で国庁からの路程は一百六里二百四十四歩である。

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原文

自国東堺去西廿里一百八十歩、至野城橋。〔長三十丈七尺、廣二丈六尺。〕飯梨河。又西廿一里、至国庁・意宇郡家。北、十字街。即分為二道。〔一正西道。一枉北道。〕

枉北道、去北四里二百六十六歩、至郡北堺朝酌渡。〔渡八十歩、渡船一。〕又北一十里一百四十歩、至嶋根郡家。自郡家去北一十七里一百八十歩、至隠岐渡千酌駅家濱。〔渡船。〕

又自郡家西一十五里八十歩、至郡西堺佐太橋。〔長三丈。廣一丈。〕佐太川。又西八里二百歩、至秋鹿郡家。又自郡家西一十五里一百歩、至郡西堺。又西八里二百六十四歩、至楯縫郡家。又自郡家西七里一百六十歩、至郡西堺。
又西一十里二百二十歩、至出雲郡家東辺、即入正西道也。惣枉北道程九十九里一百十歩之中、隠岐道一十七里一百八十歩。

正西道、自十字街西一十二里、至野代橋。長六丈、廣一丈五尺。又西七里、至玉作街。即分為二道。〔一正西道、一正南道。〕

正南道、一十四里二百十歩、至郡南西堺。又南廿三里八十五歩、至大原郡家。即分為二道。〔一南西道、一東南道。〕

南西道、五十七歩、至斐伊河。〔渡五歩、渡船一。〕又南西廿九里一百八十歩、至飯石郡家。又自郡家南八十里、至国南西堺。〔通備後国三次郡。〕惣去国程一百六十六里二百五十七歩也。

東南道、自郡家去廿三里一百八十二歩、至郡東南堺。又東南一十六里二百卅六歩、至仁多郡比比理村、分為二道。一道、東八里一百二十一歩、至仁多郡家。又一道、南卅八里一百二十一歩、備後国堺至遊託山。

正西道、自玉作街西九里、至来待橋。〔長八丈。廣一丈三尺。〕又西一十三里一百六十歩、至郡西堺。又西廿三里卅四歩、至出雲郡家北辺。又南一百九十歩、至出雲郡家。

又自郡家西二里六十歩、至郡西堺出雲河。〔渡五十歩、渡船一。〕又西七里廿五歩、至神門郡家。即有河。〔渡廿五歩、渡船一。〕自郡家西卅三里、至国西堺。〔通石見国安農郡。〕惣去国程一百六里二百四十四歩。

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