出雲国風土記・現代語訳:意宇郡

現代語訳

伯太川(はかた)。:安来市の伯太川

源は仁多(にた)と意宇(おう)との二郡の堺の葛野山(くずの)※1から出て、流れて母理(もり)・楯縫(たてぬい)・安来(やすぎ)の三つの郷(ごう)を通って入海に入る。〔年魚(あゆ)・伊久比(いぐい)がいる。〕

山国川(やまくに)。:安来市の吉田川

源は郡家の東南三十八里にある枯見山(かれみ)※2から出て、北に流れて伯太川(はくた)に入る。

飯梨川(いいなし)。:安来市の飯梨川

源は三つある。〔一つの流れの源は、仁多・大原(おおはら)・意宇三郡の堺の田原(たはら)※3から出て、一つの流れの源は枯見より出て、一つの流れの源は仁多郡の玉峯山から出る。〕三つが合流し、北に流れて入海に入る。〔年魚・伊具比がいる。〕

筑陽川(つきや)。:松江市東出雲町の意東川

源は郡家の正東一十里一百歩の荻山※4から出て、北に流れて入海に入る。〔年魚がいる。〕

意宇川(おう)。:松江市の意宇川。上流は熊野川

源は郡家の正南一十八里にある熊野山から出て北に流れ、東に折れ、流れて入海に入る。〔年魚・伊具比がいる。〕

野代川(のしろ)。:松江市の乃白川

源は郡家の西南一十八里の須我山(すが)※5から出て、北に流れて入海に入る。

玉作川(たまつくり)。:松江市玉湯町の玉湯川

源は郡家の正西一十九里の阿志山(あし)※6から出て、北に流れて入海に入る。〔年魚がいる。〕

来待川(きまち)。:松江市宍道町の来待川

源は郡家の正西二十八里の和奈佐山(わなさ)※7から出て、西に流れて山田村(やまだ)※8に至り、さらに折れて北に流れて入海に入る。〔年魚がいる。〕

宍道川(ししぢ)。:松江市宍道町の佐々布川

源は郡家の正西三十八里の幡屋山(はたや)※9から出て、北に流れて入海に入る。〔魚はいない。〕

津間抜池(つまぬきいけ)。:不詳

周り二里四十歩ある。〔鳧(たかべ)・鴨(かも)・鮒(ふな)・蓼(たで)がある。〕

真名猪池(まないいけ)。:松江市矢田町の蟹穴池

周り一里ある。

※1 葛野山:安来市伯太町と広瀬町比田の間の山
※2 枯見山:安来市伯太町の宇波山
※3 田原:安来市広瀬町の三郡山
※4 萩山:松江市八雲町東岩坂の星上山
※5 須我山:松江市八雲町熊野西境の八雲山
※6 阿志山:松江市玉湯町の葦山
※7 和奈佐山:松江市宍道町北方の山
※8 山田村:松江市宍道町来待菅原周辺(菅原道真公の生誕島根説の比定地)
※9 幡屋山:松江市宍道町の丸倉山

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原文

伯太川 源出仁多與意宇二郡堺葛野山。流経母理・楯縫・安来三郷、入々海。〔有年魚・伊久比。〕

山國川 源出郡家東南卅八里枯見山。北流、入伯太川。

飯梨河 源有三。〔一水、源出仁多・大原・意宇三郡堺田原。一水、源出枯見。一水、源出仁多郡玉嶺山。〕三水合、北流、入々海。〔有年魚・伊久比。〕

筑陽川 源出郡家正東一十里一百歩荻山、北流、入々海。〔有年魚。〕

意宇川 源出郡家正南一十八里熊野山、北流、入々海。〔有年魚・伊久比。〕

野代川 源出郡家西南一十八里須我山、北流、入々海。

玉作川 源出郡家正西一十九里拝志山、北流、入々海。

来待川 源出郡家正西廿八里和奈佐山、西流至山田村、更折北流、入々海。

宍道川 源出郡家正西卅八里幡屋山、北流、入々海。〔無魚。〕

津間抜池 周二里四十歩。〔有鳧・鴨・鮒・蓼。〕

真名猪池 周一里。

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