出雲国風土記・現代語訳:伊弉那彌命(いざなみ)

伊差奈枳命(いざなみのみこと)とは、『記紀』におけるイザナミと同神とされる神です。

『記紀』によれば、イザナギとともにオノゴロ島に降り立って国産み、神産みを行った多くの神々の母とされています。また、カグツチを産んで亡くなった後は、出雲と伯耆の国境に位置する比婆山に埋葬されたとされています(ただし、『日本書紀』の一書によれば紀伊の熊野の有馬村に葬られたとされる)。

『出雲国風土記』では登場シーンが少なく、古志郷の由来の説明以外には登場しません。しかし、出雲に深く関わっている神であり、松江市には黄泉の国の入口とされる「黄泉比良坂」が存在します。


『出雲国風土記』による系譜


なし

『出雲国風土記』による説話


・古志郷(こし)は、伊弉那彌命の時代に古志国の人々がやってきて宿としていた処であることに由来する

『古事記』における神話


・天地開闢において、神世七代の最後にイザナミとともに生まれた
・国産みを行い、イザナミとの間に日本国土を形づくる多数の子を儲ける(淡路島・本州・四国・九州等の島々)
・神産みを行い、森羅万象を司る多数の子神を儲ける(石・木・海・水・風・山・野・火などの神々)
・火の神・カグツチの出産時に陰部に火傷して苦しみ、その際の失禁や嘔吐物からも神々が生まれた
・イザナミの死後、亡骸は出雲と伯耆の国境に位置する比婆山に埋葬された
・死後は死者の行く黄泉国に住んでいたが、夫のイザナギに戻ってくるように説得される
・その際、黄泉国の王に戻れるよう相談に行くが、イザナギに決して様子を覗いてはいけないと言っておいた
・しかし、イザナギは約束を破り、イザナミは黄泉で腐敗した姿を見られてしまった
・恥をかかされたことに怒ったイザナミは、雷神やヨモツシコメに命じてイザナギを追わせた
・結局、イザナギに追いつくことはできず、出入口の黄泉比良坂を大岩で塞がれてしまった
・そこで大岩越しに口論になり、毎日国民1000人を殺すと言うと、イザナギは毎日国民1500人を産ませると反論した
・その後、スサノオが生まれると、スサノオは亡き母に会いたいと泣き喚いたと言う

『日本書紀』でも ほぼ同様の説話が描かれますが、いくつかの説話で構成されるため ニュアンスはやや異なります。

また、『日本書紀』には『古事記』で登場する神が登場せず、登場しない神が登場することもあります。

『出雲国風土記』の該当箇所


[二] 神門郡の郷

備考


・島根県松江市東出雲町には、イザナギの黄泉国訪問に因む「黄泉比良坂(よもつひらさか)」がある
『記紀』ではイザナギは兄とされるが、イザナギの兄妹では無いとする古史古伝もある(ホツマツタエなど)